日本の相続税法では相続または遺贈によって財産を取得した個人でその財産を取得した時点で日本国内に住所を有する人のことを居住無制限納税義務者としています。すなわちやさしい言葉で言い換えると日本国内に住所がある（住民票がある）時点で所有している財産がどの国にあろうが必ず日本の相続税の範囲内になるということです。

日本の法律では原則として、被相続人の本国法に従うとなっております。被相続人が帰化などをしており国籍が異なる場合は、日本での相続税は原則発生しないと考えていいでしょう。一方、海外に１０年以上住んでおり住所がない場合は相続税を回避することができます。しかし１０年以内の場合は、国内に住所がある場合と同じ扱いになるので相続税を回避することはできません。

そのため国外に住んでおり財産も国外にあったとしても１０年以上経っていない限り、日本国内での相続となります。過去は５年でしたが相続税などの課税強化による法改正により１０年と変更になっっております。

なお海外に１０年以上住んでいたとしても日本国内に財産がある場合、その財産は日本での相続税の対象になることに注意が必要です。

相続の対象となる相続財産が海外にあるときは、被相続人が所有していた海外の不動産や預貯金はもちろん、海外での借金も調査する必要があります。海外に被相続人が不動産を所有していた場合、不動産の所在する国の法律が適用されるケースもあります。日本においては相続統一主義と言い、不動産とその他財産は特に関係なく民法や相続税法に基づき相続の手続きが進められますが、アメリカやイギリス、中国など不動産とその他財産は切り離して相続する相続分割主義の国がございます。このような国では上記のようなケースが起こるので、被相続人がどの国の不動産を持っているのか、また複数の国に不動産がある場合はその国ごとに手続きが異なる点に注意が必要です。

被相続人が遺言書を書いている場合はどのようになるのでしょうか？まず遺言書が有効であるかどうかが重要になります。海外で書いたものと日本で書いたものがあり、どちらも有効な場合、原則被相続人の国籍がある国での遺言書が優先されます。

居住者が海外に５０００万円を超える財産を所有している場合、財産の種類や価額を所轄の税務署に報告しなければなりません。これが国外財産調書です。平成２４年から制定された制度で比較的新しいものとなります。この調書において報告しなければならない財産は不動産、現金、預金、有価証券などです。