事業承継は非常に中小企業において非常に重要な課題です。なかでも被相続人が中小企業の経営者だった場合、純粋に相続になってしまうと会社が続かなくなったり、相続人同士で揉めたりと悲惨になることが多いです。そのため法人の事業承継は計画的にかつさまざまなことを想定して行っていく必要があります。承継方法は主に親族内承継、社内承継、M&Aの３つと思っていただいて大丈夫です。

被相続人に長男、次男の2人の子がいてどちらも事業を承継する場合なども難しい問題に直面します。片方に継がせてしまうことで、大きな軋轢を生む可能性もあります。兄弟同士で考え方が違うこともございますが相互に理解をし協力をしていかないと会社自体が存続しない可能性もあります。

そこで妥協案となるのが会社分割です。それぞれの得意分野における事業部を新たに設立し、それぞれの事業部を承継させることができます。

MBOとはマネジメントバイアウトの略語です。M&Aの手法の一つでその企業の経営陣が中核となって自社株を買い取り経営権を取得するものです。MBOは親会社から子会社や事業部門を切り離す際第三者へ売却せず経営者やその従業員が株式を取得して会社から独立するために使われることがあります。

被相続人の息子などがいても会社を継ぐ気がない場合、純粋にM&Aをしてしまうと会社の社風が変わる懸念等もございます。役員など幹部クラスの人が引き継ぐことで事業を受け渡す方法です。ただこの場合役員が多額の株式買収のための資金を用意する必要があります。役員個人が株を買い取る場合、資金調達面で難しくなります。

仮に調達できたとしてもその借入の返済が大変です。そのため受皿会社を設立しその会社で資金調達をして役員の方に承継する方法があります。その後設立した受皿会社と承継する会社を合併させれば手続き完了です。こうすることで事業資金で返済できるので役員個人の負担にはなりません。

会社の規模が拡大し発展していくと自社株の評価額は高くなる傾向にあります。喜ばしいことではあるのですが高くなればなるほど多額の資金を用意する必要があり後継者への株式移転が難しくなります。そのような場合、株式公開（IPO）を検討してもいいでしょう。

株式公開をすることにより自社株に換金性が生まれ事業承継対策として大きい意味を持ちます。

非上場株式の場合、換金性がないため相続や承継においてキャッシュアウトしてしまい、うまく事業承継できないケースがあります。一方で上場をしてしまえばその売却益により現金が調達でき、その資金を用いて相続税対策をすることができます。

ただしコンプライアンスが厳しくなることや企業内容の開示義務があります。したがって事務経費や手間も増えると言ったデメリットもあります。

IPOは究極の事業承継対策と言ってもいいでしょう。株価が高価な場合はIPOにより承継がスムーズに進むことがあるので一つの手法として念頭におくと良いと思われます。